155zagato 調査レポート
 003 155ZAGATOボディ その問題
FRPで換装されている155-ZAGATOのボディは、アルファの工場をラインアウトした標準の155と異なり、そこここに手作業的な様相を見ることが出来ます。別の言い方をすれば、粗が目立つとか、個体によってばらつきがある、といったところでしょうか。

ただ、ロールアウトをして10年弱を超えた車両ですので、経年による劣化も確実に発生しています。

経年劣化なのか、事故なのか、仕様?なのか。治せるのか、あきらめた方がいいのか?
中古車選びに役に立つ粗捜し?というわけではないですが、購入時にチェックをすると良さそうなところを紹介していきます。
  155-ZAGATOのフロント・リヤスポイラーはそれぞれ一体型のFRPで成形されています。
ノーマルバンパーのレーンホースを加工したものに接着剤とリベットで固定してあるため、接着剤の劣化状況によっては、軽い衝撃でバンパー落ちを発生させてしまいます。
(左の写真はバンパー落ちが発生した例。フロントは隙間に貫き手が入るくらい)
バンパー落ちのトラブルの場合、脱着・最接着での修正が可能です。出来ればシーラントによる再接着だけでなく、ガラスクロス・ポリエステル樹脂による接着を追加した方が良いでしょう。

また、バンパー落ちを発生させる要因は軽めの衝突が多いため、塗装面の皺寄り、クラックが発生している場合があります。
下部のダクト部等、エッジ部も気をつけてみてみると素性がわかります。もともと小回りの効かない155ですからね。多少はぶつけていても仕方が無いでしょう。

  155-ZAGATOのリヤクオーターパネルやリヤドアは、しっかりした冶具がないと位置があわないような構成となっています。このため、 ZAGATOからロールアウトされた車体には、各パーツの取り付け精度は高く、激しくチリのあってない車体は無いようです。ただ、フロントドアとリヤドアのチリ合わせだけは少々手を抜いていることがあるみたいです。
ズレの激しい車体の場合、フロントドアの取り付けボルトを調整することでいくらかは修正が効くのですが、ドアのボルトを調整するためにはフロントフェンダーを外さないといけません。が、フロントフェンダーの後端部はシーラントで固定されているので大仕事になります。
  155-ZAGATOのアキレス腱でもあるCピラー部は殆どの車が腐食による影響を受けています。
リヤドアのピラー部は外鈑切除して取り付けてあるドアパネルとの境になっているため、クラックや腐食が発生しやすい箇所です。
特にCピラー側は雨水が溜まりやすい形状になっていることと、鋼鈑切除時の防錆処理が不十分なため、塗装が膨らんでいることが多いと思います。ES-30のCピラー部も同様のトラブルがあり、日本の気候とイタリアンな仕事とのギャップとして受け入れるしかないでしょう。
  また、155-ZAGATOはリヤドアパネルが膨らんで、ウインドウと隙間が開いているケースがあります。これは、ドアパネルがリヤウインドウの摺動する箇所をドアフレームに固定できないからです。
ドアパネルの上部はリヤのクオーターウインドウ部と、Bピラー部で接合されているので、この不具合はいた仕方ない問題として理解してください。
一部の車体には、リヤウインドウ部の外鈑を30mm程残してドアパネルを貼り付け、この問題を対処してありましたが、コストダウンなのか極初期の車両にしか採用されなかったみたいです。
それらも、不十分な防錆処理のために腐食を進行させる要因の一つになってしまったようです。
  先にも述べましたが、リヤクオーターパネルの取り付けは冶具がないと位置が出せません。リヤドアパネルとリヤスポイラーを基準として、上側、後端側に逃がします。上側はCピラーカバーを、後端はトランクを微調整することで、ズレを吸収させています。
このため、上部、後端部の取り付け部は隙間が大きくなります。シーラント等で目止めをしてはありますが、処理が不十分な場合、劣化してしまった場合は雨漏りの要因となってしまいます。
リヤシートベルトを引っ張りだしたときに湿っている場合、トランク内が濡れている場合はこのあたりを疑うとよいでしょう。
FRPであるがゆえの自由な造形と引き換えに、細かい不具合もセットとなっています。ただ、使用されているFRPの質は良く、ガスの発生やクラックは発生しにくいようです(保管状態や車体の色にもよりますが)。

また、塗装については155-ZAGATOの殆どが並行車ベースのため1コート塗装となっています(シルバーを除く)。また、電着塗装の上に直接仕上げ色が塗ってあります。
ZAGATOによって換装された部品は2コート処理で、赤色の車両のケースだと下塗りにピンク色のサフェーサーを使用して発色を良くしています。
クリア塗装(トップコート)をしている箇所と、していない箇所では経年劣化の進行状態(すなわち褪色)が異なるため、いずれは再塗装が必要となってしまいます。
ただ、FRPの下処理込みの再塗装は結構な価格になってしまいます。なるべく良い車両に出会えると良いのですが、希少中古車ですから運に頼らざろうありません。

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